製品VOC規制関連のFAQ(2020年)

 当社には、2020年3月に公布された下記の7件の製品VOC含有規制基準について多くの相談が寄せられています。このたび、皆様のお役に立てるよう、これら基準に関する当社見解を紹介するコーナーを開設致しました。
 このコーナーでは、当社によく寄せられている質問をQ&Aの形式で掲載しています。適用範囲、測定・検査、適用除外等の内容からなります。下記Q&Aの内容に関するメールでの質問も受け付けております。お問い合わせページよりご連絡ください。

基準名称一覧 

  1. 木製器具用塗料中の有害物質規制値(GB 18581-2020)
  2. 建築用壁面塗料中の有害物質規制値(GB 18582-2020)
  3. 車両用塗料中の有害物質規制値(GB 24409-2020)
  4. 工業防護用塗料中の有害物質規制値(GB 30981-2020)
  5. 接着剤VOC制限量(GB 33372-2020)
  6. インキ中のVOC含有量規制値(GB 38507-2020)
  7. 洗浄剤VOC含有量規制値(GB 38508-2020)

※各基準名のリンク先は基準原文のPDFダウンロードページです

また、当社ではこれら規制や上位法の関連部分をまとめた有料レポートを販売しています。お申込は以下URLを参照下さい。
http://www.jcesc.com/env_law_reg.html
http://www.jcesc.com/env_law_reg.html#LR0069

このほか、「中国2020年VOC対策攻略方案」の製造業部分当社和訳(約6800文字、5ページ)を無料で提供しております。ご希望の方はご連絡ください。

※地方によっては独自の制度や運用がありうる点にご留意願います。
※運用等の状況が新たに判明した場合、記載を随時調整します。
※メールで相談頂いた場合、全ての質問にお答えできるとは限りません。予めご了承ください。

最終更新日:2020年10月23日

1.適用範囲

Q1-01.対象品目を使用した製品・包装物は規制対象?
A1-01.今回の規制対象外です。例.粘着テープ、印字済み製品・包装物
 あくまで塗装・接着・洗浄できる状態の製品のみ規制対象です。

(更新:2020年10月10日)

Q1-02.対象品目の原材料は規制対象?
A1-02.今回の規制対象外です。今回の製品VOC基準の規制対象は、VOC含有製品の製造・販売業者(洗浄剤等)及びそれを利用する工場側に区分されます。
工場側がVOC含有製品製造販売者から、洗浄剤等の特定用途ではなく単一成分の有機溶剤として製品を購入して洗浄剤として利用し、それがVOC製品基準を上回っていた場合でも、VOC含有製品の製造・販売業者は処罰の対象とはなりません。
一方、工場への環境・安全当局の現場検査の際に、使用する工場側が処罰対象となる可能性はあります。洗浄剤等特定の用途と明示した上で、基準を超過した有機溶剤を販売した場合、販売者、使用する工場側いずれも法令違反で処罰対象となります。

(更新:2020年10月23日)

Q1-03.有機溶剤は施行後も購入・使用可能?
A1-03.今回の規制対象外です。あくまで塗料・インキ・接着剤・洗浄剤の製品のみが対象です。

(更新:2020年10月10日)

Q1-04.接着剤の希釈剤は規制対象?
A1-04.希釈溶剤自体は「接着剤」ではないため規制対象外となります。しかし、今回の接着剤基準のVOC含有量測定対象はあくまでも「使用可能状態となった」接着剤であるため、もしその接着剤が溶剤で希釈して使用することを前提として作られている場合、希釈後のVOC含有量が基準を満たしている必要があります。

(更新:2020年10月10日)

Q1-05.混合する場合、規制対象になる?
A1-05.混合・調合する前のそれぞれの物質について、接着・塗装の機能がまだ発揮されていない段階では、規制対象外になります。混合・調合して、接着・塗装する段階の状態で測定して規制値順守が求められます。

(更新:2020年10月10日)

Q1-06.同一企業内で対象品目を製造しそのまま使用する場合は規制対象?
A1-06.市場を通さない(販売行為がない)ため、規制対象外です。

(更新:2020年10月10日)

Q1-07.同一のグループ内のA社が対象品目を製造し、B社がそれを使用する場合は規制対象?
A1-07.販売行為があるため、規制対象になります。

(更新:2020年10月10日)

Q1-08.同一の工場敷地内で、A社が対象品目を製造し、B社がそれを使用する場合は規制対象?
A1-08.販売行為があるため、規制対象になります。

(更新:2020年10月10日)

Q1-09.施行日以降、使用にも規制がかかる?
A1-09. 工業塗装と接着剤・洗浄剤は扱いが少し異なります。
工業塗装:基準適合塗料の使用が義務付けられ処罰規定もあります。
接着剤・洗浄剤:基準適合物品の使用が義務付けられるが処罰規定はありません。
 工業塗装では、業種を問わず工場内の生産ラインで使用される塗料・インキが対象になります。
 標準化法には、基準違反製品の使用禁止規定はありません。基準違反製品の生産・販売・輸入を禁止するため、実質的に購入・使用できなくなっています。
 大気汚染防止法は、VOC含有原材料・製品の使用では品質基準を満たすよう求めていますが、工業塗装で低VOC含有量の塗料を使用しない場合に罰則があるのを除き、使用に関する処罰規定はありません。標準化法と同様、基準違反製品の生産・販売・輸入を禁止するため、実質的に購入・使用できなくなっています。
 工業塗装と接着剤・洗浄剤で差があるのは、塗料は製品完成後も外に揮発しうるが、接着剤・洗浄剤は、製品完成後は外に揮発することがない、という点が考えられます。
・「使用にも新基準を適用」の根拠
 大気汚染防止法の第44条
 生態環境省『重点産業企業VOC現場検査ガイドライン(試行)』『VOC対策実用ハンドブック』
・「使用に処罰なし」の根拠
 標準化法には使用に関する規制なし
 大気汚染防止法:使用に関する処罰条項なし(工業塗装を除く)
 地方条例でも同様
 VOC無組織排出規制基準で、VOC処理装置の設置義務が「低VOC含有規定を満たす場合は除外」とされており、満たさない場合も想定されています。

(更新:2020年10月10日)

Q1-10.施行日前に購入した対象品目は、施行日以降、使用できる?
A1-10. 施行日前に購入した新基準不適合の塗料(インキ含む)・接着剤・洗浄剤の在庫の使用是非については、
・工業塗装は×:法律違反かつ処罰条項あり
・接着剤・洗浄剤は△:法律違反だが処罰条項がなし、つまり処罰されないが違法リスクありとなっています。
 違法リスクとは、環境立入検査で基準違反の接着剤・洗浄剤の使用があると判明すれば、①処罰はないものの法律に基づき改善指導を行う(実質的に強制)が、これにより在庫分が使用できなくなり廃棄を求められ、さらに基準適合の接着剤・洗浄剤を調達するまで生産できなくなる、②企業環境信用に影響する、③当局がその企業の法律違反状況を公開する――などが挙げられます。

(参考)
 標準化法(2017年版)の第25条には「強制基準を満たさない製品・サービスについて、生産・販売・輸入や提供を行ってはならない」とあり「使用」は記載されていない。

(更新:2020年10月19日)

Q1-11.購入状態での利用も可能だが、スプレー塗布のために希釈剤を混ぜて利用することもある接着剤は、希釈後のVOC濃度が基準を満たす必要があるか。
A1-11.製品説明において溶剤希釈によるスプレー用途について明記している場合、希釈後の濃 度要求にも配慮する必要があると思われます。
 接着剤VOC基準では、接着剤は本体型接着剤、水ベース接着剤、溶剤ベース接着剤に区分されており、購入状態では「本体型接着剤」に該当し、スプレー塗布するために有機溶剤 で希釈した場合は「溶剤型接着剤」に該当する濃度にまで溶剤濃度が高まる場合、 希釈前、希釈後それぞれの状態で本体型、溶剤型接着剤の基準を満たす必要があると考えられます。

(更新:2020年10月23日)

2.測定・検査

Q2-01.どのように当局より検査されるのか?
A2-01.税関、市場、環境立入検査が対象となります。
・税関検査:通関時に税関が、対象品目が基準適合しているかを検査します。
・市場検査:品質監督局が販売している対象品目をランダムで調達し基準適合しているかを検査します。
・環境検査:環境局が立入検査時に、工場内にある対象品目を取出して基準適合しているかを検査します。

(更新:2020年10月10日)

Q2-02.検査では何が調べられるのか?
A2-02.検査する資料としては主に、測定報告書、SDS、包装上のラベル、製品説明書になりますが、当局がそれだけで不十分と判断した場合、現場サンプリングして専門の実験室で測定試験して判断します。

(更新:2020年10月10日)

Q2-03.測定報告書はどのような要件があるのか?
A2-03.測定報告書とは、CMAやCNASの資格を持つ測定機関が、国家基準に基づき測定・作成した報告書です。

(更新:2020年10月10日)

Q2-04.測定機関について指定があるのか?
A2-04.製品VOC含有測定に特化した測定機関の認証制度は、まだありません。CMAやCNASの資格を持つ測定機関が製品VOC測定資格を有していれば、対応可能です。

(更新:2020年10月19日)

Q2-05.違反発覚時にどんな処罰がある?
A2-05.適用法令は、大気汚染防止法(2018年版)、地方版大気汚染防止条例、製品品質法(2018年版)です。

(更新:2020年10月10日)

Q2-6.熱硬化型接着剤はどの段階の状態でVOC含有量の測定を行うか。
A2-6.熱硬化型接着剤は、接着剤VOC含有量基準では本体型接着剤に区分されます。
本体型接着剤は、GB33772-2020別添文書E『本体型 接着剤の測定』及びその引用基準に基づき、成分を混ぜ合わせて加熱し、成分混合前と加熱処理後の重量差によってVOC含有量及び含有率を算出するとされています。

(更新:2020年10月23日)

Q2-7.製品VOC含有量基準の順守の証明は、日本国内の測定機関や自社測定でも対応可能か。
A2-7.製品中のVOC含有量が基準を満たしているかを証明するには、CMA(資質認定計量認証証書)やCNAS(中国合格評定国家認可委員会実験室認可証書)
の認定資格を持ち、製品中VOC含有量の測定が可能な機関に測定を依頼し、証明書を取得する必要があります。日本国内にCMAやCNAS有資格機関はありません。
通関検査では、当局の認める測定機関が発行した証明書を示さなければならない可能性があり、また環境立入検査や市場抽出検査でも測定報告書の提示が求められる可能性があります。

(更新:2020年10月23日)

3.適用除外

Q3-01.対象品目の中で適用除外はないのか。
A3-01.対象品目の中で適用除外のケースについては、各GBの中で規定されています。

(更新:2020年10月10日)

Q3-02.代替品がない場合はどうなるのか?
A3-02.代替品については一般論として、代替品がないもの、代替品はあるが極めて高価になるものについては、地方政府や業界団体などが環境・品質管理の行政部門と協議した上で、条件付きで当面除外を通達することはあり得ます。
 広東省中山市では、2017年制定の「中山市VOC関連事業環境面参入規制管理規定」に対し、代替品がないことを証明する専門家論証意見を提出し審査の上で除外できる規定を、2020年改定パブコメ版に盛り込んでいます。
 リンク:中山市生态环境局关于征求《中山市涉挥发性有机物项目环保准入管理规定(2020年修订版)(征求意见稿)》公众意见的公告
 上海市大気汚染防止条例(2018年)、浙江省大気汚染防止条例(2016年)、山東省大気汚染防止条例(2018年)、広東省大気汚染防止条例(2018年)では、除外対象となる高VOC含有製品のリストを作成するよう規定しています。江蘇省VOC汚染防止管理弁法(2018年)では、高VOC含有製品の使用を環境敏感地区に限定して禁じており、他の地域では禁じていません。ただし、高VOC含有製品リストはまだどこも公表していません。

(更新:2020年10月10日)

Q3-03.接着剤VOC制限量で、範囲に「適用しない」ものが挙げられているが、「中間体として使用する、または市場に流通させずに生産原料として使用する接着剤」の「中間体として使用」とはどういう意味か。
A3-03.この規制では、製品状態となって売買する接着剤を規制対象としています。このため、接着剤原料(これは接着剤製品としての規制はかからない)を購入して工場内で加工・調合・反応等製造過程を経て接着剤にして生産に使用する場合、「市場に流通」しておらず、規制対象外となります。ただし、工場内にこの製造工程を新たに導入しようとする場合、環境アセス審査で否決される可能性があります。工場内の加工・調合・反応等製造の途中で接着剤の前状態となる「中間体」に対しても、規制対象外となります。

(更新:2020年10月19日)

Q3-04.接着剤VOC制限量で、範囲に「適用しない」もので「材料の粘着時に利用する特殊機能性表面処理剤」があるが、接着用に先に塗布するプライマーはこれに該当すると考えて良いか。
A3-04.接着剤用プライマーがそれ自体で接着性能を持たないものであれば、特殊機能性表面処理剤に該当すると考えられます。単独で粘着性を持っているが、外的要因でさらに反応して粘着性が高まる補助剤等は、「材料の粘着時に利用する特殊機能性表面処理剤」条文による適用除外とはならないと思われます。一方、単独では接着機能をほとんど持たず、かつ今回公布されたその他6件の基準の製品区分にいずれも当てはまらない製品であれば、特殊機能性表面処理剤として規制対象外になると思われます。

(更新:2020年10月23日)

Q3-5.接着剤を有機溶剤で希釈する行為について、製品中に希釈利用に関する記載がなく、購入者が独自に希釈して利用した場合、基準の適用対象外となるか。
A3-5.今回の基準の規制・処罰の対象は、①接着剤や塗料製品の販売者及び②それを利用する工場側となります。
接着剤製品中に希釈に関する記載がないという前提で、使用する工場側が独自判断で溶剤を用いて希釈し、希釈後の接着剤が基準を上回っていた場合、接着剤・塗料の販売者は処罰対象とはなりません。しかし、使用する工場側が環境検査で処罰を受けるリスクは残っています。
そのため、製品に希釈に関する明示的記載がなくても、一般的に希釈して使用する用途のものである場合、これを踏まえても基準を順守できるような製品規格とするよう使用する工場側が接着剤メーカーに求めてくる可能性はあります。

(更新:2020年10月23日)


4.基準内のその他事項

Q4-01.本体型接着剤とは何か
A4-01.同基準内の接着剤は、1水ベース接着剤、2溶剤ベース接着剤、3本体型接着剤の3種に区分される。つまり、①最終的に蒸発(揮発)する成分が何であるか、②蒸発する成分が何%含まれているか、が分類の基準であり、②が5%以下の接着剤はいずれも「本体型接着剤」に分類されると考えられます。

(更新:2020年10月10日)

Q4-02.製品の用途が複数にわたる場合、どの規制値を適用?
A4-02.最も厳しい規制値を適用します。

(更新:2020年10月10日)

5.その他

Q5-01.今回の7件の塗料・接着剤・洗浄剤のVOC含有規制基準は突然出てきた印象があるが、以前から動きはあったのか。
A5-01.2018年から次の動きがありました。
・2018年6月、青空保護戦行動計画に記載
・2018年7月、全人代分科会で塗料・インキVOC基準に言及
・2018年8月、塗料・インキVOC基準の制定計画が出る
・2019年1~4月、一部塗料・洗浄剤・接着剤VOC基準の制定計画が出る
・2019年7月、環境省方案で制定改定方針を再掲出
・2019年11月、一部塗料・洗浄剤・接着剤VOC基準のパブコメ版が公表
・2019年12月、一部塗料・洗浄剤・接着剤VOC基準のWTO-TBT通報版が公表
・2020年3月、正式公布

これらは、当社の有料版『週刊中国環境規制/ビジネスレポート』でも取り扱っておりました。中国環境規制の動きを事前段階から知るには、本『レポート』は有益であると自負しております。

(更新:2020年10月23日)

Q5-02.今回の7件以外にも塗料・接着剤・洗浄剤のVOC含有規制基準はあるのか。
A5-02.製品VOC規制基準は、今回の7件のほかにも、①国家級強制基準、②国家級推奨基準、③地方基準等の区分で一部制定されています。
①国家級強制基準の一部事例
・室内装飾内装材料 接着剤中有害物質規制値(GB18583-2001)
・室内装飾内装材料 壁紙中の有害物質規制値(GB18585-2001)
・室内フローリング用塗料中の有害物質規制値(GB38468-2019)
・建築用接着剤有害物質規制値(GB30982-2014)
・玩具用塗料中有害物質規制値(GB24613-2009)
・船舶塗料中の有害物質規制値(GB38469-2019)
・建築防水塗料中の有害物質規制値(JC1066-2008)
②国家級推奨基準の区分
・グリーン設計製品シリーズ基準
・環境ラベル製品技術要求シリーズ基準
・各種業界団体基準
(一例)
・低VOC含有量塗料製品技術要求(GB/T38597-2020)
③地方基準の一部事例
・北京-天津-河北の建築類塗料・接着剤VOC含有規制基準
・深セン市低VOC含有量塗料技術規範

詳細内容については個別コンサルティング業務の対象となります。

(更新:2020年10月23日)

Q5-03.今回のVOC規制対象製品を自社で製造せず、メーカーからの購入のみを行う企業の対応について。
A4-03.まずはVOC含有製品を製造するメーカー側に対し、当該基準を順守していることを示す自己宣言を行うよう依頼し、これが難しい場合は代替サプライヤの検討も必要となります。また、VOC含有製品メーカーに自己宣言を求める際は、併せて国の認定資格(CMA(資質認定計量認証証書)やCNAS(中国合格評定国家認可委員会実験室認可証書) )を持つ認証機関が発行したVOC含有基準順守を示す測定報告書の写しを求めるのが望ましいと言えます。

(更新:2020年10月10日)

6.更新履歴

2020年10月19日 
更新分:Q1-10. Q2-04. Q3-03. を更新

2020年10月23日
更新分:Q1-02. Q3-04.
追加分:Q1-11. Q2-06. Q3-05. Q4-03. Q5-01. Q5-02. Q5-03.