対中環境ビジネスマニュアル

  • 中国の広義の環境ビジネス市場は、近年大きく拡大している。しかし日系企業は必ずしも多く食い込めていない。例えば、ビジネス習慣の違いによる交渉不成立、寡頭競争による価格下落、市場参入基準の引き上げ、中国企業の技術力向上、世界中の企業の参入等などの原因が挙げられる。
  • 一般に日本人にとって中国ビジネスは難しいといわれている。ここでは、規制ビジネスでもある環境ビジネスの分野に絞って、注意点やノウハウを紹介する。

中国環境ビジネス19の注意点

進出リスクより、進出しないリスクの方が大きい

2010年、中国製太陽電池が日本市場に本格攻勢に出た。これは太陽電池だけの特例ではなく、風力発電でも世界トップ5に中国メーカーが2社入っており、いずれ日本市場に進出するであろう。汚染処理分野でも、中国の環境エンジニアリング会社が海外で事業を受注する例が増えてきた。また中国はレアメタル・レアアースの資源を握っているほか、電気自動車やスマートグリッドの面では標準化を進め、国際標準化を狙っている。このままであれば、いずれ日本の環境産業は、日本国内の市場ですら苦境に追い込まれる可能性もある。企業側からすれば、この状況を打破するには中国市場で一角を占め、これを起点とした世界戦略を構築するのが望ましい。行政側からすれば、日本の環境企業による中国市場参入支援、国際標準化支援が望まれている。

進出リスクより、進出しないリスクの方が大きい

 中国の環境・省エネ市場分野では、諸外国に比べて日本勢は必ずしも積極的ではない。過去の中国進出の失敗情報から、「だまされるのでは?」「技術を真似される」等の心配が多いためである。そういう日本企業の「石橋を叩いて渡らない」姿勢は、中国側に極めて不評である。その一方、すでに中国進出した日本企業の実情を見ると、大胆に進出したのはいいが、中国の政策・法律・ビジネス習慣を研究していない、中国人(中国側カウンタパート)に完全に頼りきっているなど、脇が甘い事例も多い。このように日本企業は両極端であるが、実はこれには共通の原因がある。それは、中国に対する勉強不足である。中国の環境省エネ市場を徹底研究すれば、どことどのような話をすべきか、技術コピー対策はどうすべきか、交渉時の注意点など自然と分かってくる。特に中小企業は自前で中国市場戦略研究を行う余裕がないところも多いが、その場合は専門家と組めばいい。
中国ビジネスは中国側に任せるべきとの単純な依存はリスキーである。中国側団体が信用に足るかを調査する必要がある上、たとえ信用に足る団体であったとしても、できないことも「できる、問題ない」と言うのが常である。ビジネスモデル構築には日本側もある程度関与する必要がある。

慎重すぎる日本企業と脇の甘い日本企業

先入観を排して中国を徹底研究し、日本ビジネスの感覚を脱すべし

中国のビジネス習慣は日本とは大きく異なる。日本人と中国人は見かけ上似ており、しかも「同文同種」の関係にあるとして、中国のビジネス習慣は日本と似ていると無意識的に錯覚し、知らぬ間に日本式ビジネス習慣を押し通そうとする傾向がある。もちろん全て中国側に合わせる必要はないが、少なくともビジネス習慣の違いを熟知しておくことは必須である。中国との付き合い経験のない企業に対しては、「中国人は宇宙人だと思って交渉せよ」と助言している。ただし「郷に入れば郷に従え」とはいえ、賄賂の悪習までまねするのは問題である。

中国の多様性(地理、経済格差、文化)を理解すべし。中国の面積は日本の約26倍と広く、地域別に経済圏を構成している。発展状況、気候、産業構成、人々の考え方、商習慣、言語(方言)なども異なる。中国は、欧州とアフリカを一つにしたような国であると考えた方が良い

必要な人脈ネットワーク

中国ビジネスでは、人脈がものを言う。しかし都市部では、法治が浸透しつつあり、ビジネスにおける人脈の影響力が低下してきている。またキーパーソンや人脈構図などを事前に自前で調査しておくこと、別系統の人脈を複数持っておくことが望ましい。

中国には「ウソかホントかわからない」情報や「木を見て森を見ない」断片的情報が多い。複数の系統の人脈を活用して、裏を取ることが重要である。そのためには、独自に人脈ネットワークを開拓し、独自で複数の情報源を築いておく必要がある。

企業や行政だけでなく、行政に影響を与えている学者や研究者、環境汚染を報じるメディア等ともつながりを持ち、また用心棒的に日本の行政・業界団体などをかませる方がよい。

協力相手は慎重に選ぶ ~在日等知り合いの中国人に頼むのはリスキー

中国ビジネス成功の最大のカギは、よき協力相手(カウンタパート)を見つけ、互恵関係を作ることである。

具体的には、国全体の組織体制や市場シェアなどマクロから見て、協力相手の候補を数多く挙げ、比較検討し絞り込んでいく。どの組織も、「自分が最もふさわしい」とそれなりの理屈をつけて主張するが、鵜呑みにしてはいけない。分野別・地域別に協力相手を分ける方法もあるし、そもそも協力相手を一つに選ぶ必要もない。技術を保有する日本側こそが中国側を天秤にかけられるはずである。

失敗する例でよくあるのが、長く付き合いのある中国人に頼りすぎるケース。単に「お友達」「知り合い」という理由で協力相手に選ぶのはリスキーであり、ドライに徹したい。特に日本滞在が長い中国人は、中国内の事情がわからなくなってきたり、中国の有力人脈が薄かったりする場合もある。人物を正しく評価できる「評価基準」を持つ必要がある。

「自分は有力政治家との人脈がある」とやたらに強調する人や、環境ビジネスをチャンスとみなして気軽に参入した専門外の人にも要注意。日本からカネや技術を引き出そうとしているあやしいブローカーが暗躍している。行政関係者・研究者・退役軍人などはビジネスセンスに疎い。

当社はコンサルタントとして、カウンタパートを固定していない。固定してしまうとビジネスコンサルティングがゆがんでしまうリスクがある。当社では、ビジネスの内容ごとに、2万5000アカウントの中国語版日中環境協力メールマガジン(人脈)を通じて、ふさわしい協力相手を複数確保し、絞り込み・フォローアップ評価をしている。

得意な地域と分野をつくる 東部沿海地区から入るのが常道

中国は広いため、初めから全国を相手にするのではなく、得意な地域を作っておくのがよい。まず1ヶ所で実績を上げ、その成果を持って別地域でも展開していく。また商品の種類が多い場合も、重点を絞る方が良い。

地方別の中国人の特徴を踏まえる。Ex:北京-官僚的で上海に対抗心、上海-スマートでビジネスセンス高い、広東-カネ最優先、山東・東北-義理人情など。

日本企業は、まず経済的に豊かで外国ビジネス慣れしている東部沿海地区で成功のモデルを作り、その後に中西部地区に進出するのが望ましい。

市場・技術動向を把握 ~「日本の技術を中国市場で」ビジネスモデルも転換必要

中国ビジネスを日中二国間で考える傾向があるが、実際には日中だけでなく欧米や韓国、シンガポールなど世界の多彩なプレイヤーが集まるマルチ市場であり、まさしく「世界の縮図」である。中国側は、他の日本企業や他国企業、地元企業を天秤にかけている。

低価格では中国地元企業との競合、質で勝負する場合は欧米企業との競合、その中間では韓国やシンガポールなどアジア勢との競合を覚悟する必要がある。

中国市場・政策の変動は激しく、常に最新情報を仕入れておく必要がある。以前の経験は参考程度にしかならない。中国の変化は日本の4倍であるという指摘もある。

引き合い情報でも、中国側はダメもとで言うケースが多い。

中国の技術力は大幅に向上しており、国産化推進の戦略もある。中国の技術力を甘く見ない。今後の中国環境ビジネスでは、単に日本の技術を普及させるという従来方式から、共同開発・投資協力・中国技術の日本への普及・自社技術のアジアンスタンダード確立といった新たなビジネスモデルも考えなければならなくなる。

中国では、儲かると思えばみな同じビジネスをやり、過当競争を引き起こして業界共倒れになり、劣悪企業しか残らないこともある。いち早く業界スタンダード整備・産業規範整備に協力して、安価な劣悪製品の入る余地をなくす工夫が必要。

中国市場に合わせたカスタマイズ ~日本の技術・製品はそのままでは使えない

日本の環境技術や設備はそのままでは中国市場に合わず、カスタマイズが必要になる。

オーバースペック・高価格:スペックを下げる、現地生産化などでコスト削減できる。一方で中国側は対応能力を考慮せずに最新技術・高性能製品を要求することが多いので要注意。

仕様の違い:中国の実情に合わせる必要がある。例えばゴミ焼却場では、中国のゴミは日本のより熱量が低く、かなりの燃料が必要になる、水質計測器では、黄河等の濁度が高い河川では対応できない場合もある。

中国の各種環境規格:一部の汚染処理技術・製品については推奨規格を決めている。

技術コピー、知財対策 ~新たなビジネスモデル構築も視野に

中国進出をためらう最も大きな理由の一つは、技術を真似されるという知財問題であろう。中国WTO加盟で知財管理が厳格になってきたものの、まだコピー天国の汚名を返上するレベルにはない。

知財対策には近道はない。一般には、中国や他地域で有効な国際特許を取得するのが前提である。簡単に技術の詳細内容を公表しないよう配慮する。特許を押さえていることを明確にする。その上で、問題があれば、JETRO等の関連機関や弁理士事務所に相談する。技術レベルに自信がある場合はブラックボックス方式にするのも一考の価値がある。中国では、司法手段よりも行政手段による取締りの方が、より速く効果的であるとされる。

国際特許を取得してもリスクは消えるわけではない。単に裁判に有利になるだけである。最初から技術コピーされることを念頭においてビジネスモデルを構築すべし。1技術だけで長くビジネスするのではなく、次々に新しい技術を開発して市場投入する方式がよい。またその後の付随ビジネスを考慮して、中国に対して情報開示し、中国の産業スタンダードを握る方法もある。

交渉時に日本の行政部門とのつながりをちらつかせれば、それなりの抑止力にはなる。

日本で開花しなかった技術を中国で開花させようという戦略もある。国内実績がないという弱みはあるが、人脈、資金力、マンパワー、中国ビジネス経験といった条件に恵まれている場合は、一考の価値があろう。

情報収集と情報発信 ~断片的情報に惑わされないように

断片的情報に惑わされない:日本の新聞に載るような中国環境ニュースは断片的情報が多い。これでは全体像はわからず、本質を見誤る可能性がある。全体像がわかっているコンサルタントと組むことが重要である。

中国ビジネスでは情報収集が重要:まず公開情報を押さえるのが原則、ただ環境分野の公開情報だけでも情報量は相当多い。情報収集に当たっては次の情報サービスが有効である。

有料版『週刊中国環境規制/ビジネスレポート』

中国の行政組織や政策決定過程を知る

中国の環境に関する行政組織は、環境保護省(原文:環境保護部)、住居・都市建設省(原文:住房和城郷建設部)、国家発展改革委員会、水利省(原文:水利部)、国家海洋局、工業・情報化省(原文:工業和信息化部)、商務省(原文:商務部)など多い。日本以上のセクショナリズムがある。

汚染対策は環境保護部門、リサイクル・新エネ・省エネ・節水は発展改革部門、汚水・ゴミ処理は建設部門、自然保護は林業部門、製品汚染規制は工業・情報化部門などに分かれている。特に国家発展改革委員会の環境・省エネ事業に対する影響力は大きい。水分野だけでも、水利省、環境保護省、海洋局、建設省、発展改革委、林業局、国土資源省、交通運輸省等に権限が分かれている。

地方では省級・市級にも同様な組織があり、行政部門の上下関係は薄く、比較的独立している。

環境ビジネスにあたっては、現地で試験・実証が必要な場合が多く、研究機関との付き合いは必須である。各省庁直属の研究機関、大学、中国科学院系列、社会科学院系列、各種業界団体、地方業界団体なども影響力を持っており、組織的には複雑に入り組んでいる。分野別に強い機関・大学、研究室、教授がいる。事業展開で研究が必要な場合、これら情報の交通整理も必要である。

重要な最初の実績 行政団体のマッチングも別にきめ細かいフォロー必要

どんなに優れた技術でも、まず本国で実績があるのが前提である。その上で、中国内で実績がないと普及は困難である。どの企業も最初はゼロから始まるが、最初の実績を上げるのに工夫が必要になる。たとえば日系企業に採用してもらう、無償提供してデモ事業をしてもらうなどである。

公益法人等が行う展示会やマッチングセミナーなどに過度の期待は禁物である。あくまで関心ある中国企業と知り合うだけの数多くの一ツールに過ぎない。相手の素性、意図、能力、業績など、専門家を交えて相手をじっくり検証する必要がある上、その後に長くてタフな交渉マラソンがあり、フォローアップ体制を整えることが重要である。

日系団体との連携 特に行政団体との連携

最初は中国進出日系企業の工場汚染対策や日本の行政系プロジェクトに関わるようにし、その実績をもって中国内の他事業に展開するといった二段構えの戦略も有効である。

現地に進出してビジネスが進む場合、主業務に加えて、登記、税務、会計、通関、運搬、法務、知財保護など付属的関連業務も出てくる。中小企業の場合は外注になるが、これらのコストも織り込み、外注先の情報も各方面から仕入れておく必要がある。

一社だけで中国ビジネスを行うよりも、他の日系団体と連携しながらのビジネス、特に官公庁や自治体など政府系団体との連携が望ましい。中国は「官重視民軽視」の傾向があるため。

通訳・現地スタッフ

日中の環境ビジネスに当たっては、通訳が非常に重要である。しかしその重要性はあまり理解されていない。日中のビジネス文化の違いを熟知し、専門分野の知識に熟知し、さらに過去の協議の流れを把握していなければならない。通訳ゆえに議論がかみ合わない場面も多く見られる。特に環境技術や省エネ技術の分野では、高度な専門性が求められるため、一般の通訳では対応できないことが多い。また通訳については、そのレベル、得意分野だけでなく、性格も見る必要がある。

適度に補足できるレベルにある通訳を専属とする、社内で育てる、または中国語の分かる人物を複数用意する等の工夫が必要である。日本人の通訳も用意し、議論が中国寄りにならないようにするのも望ましい。

現地化が重要だといわれるが、日本人自身の現地化(日本人の中国通化。日本人の精神性・習慣まで捨ててはならない)も重要である。中国通の日本人と日本通の中国人の組み合わせが重要である。

中国人の仕事の流動性は高く、魅力ある職場をつくらないと残ってくれない。研修を受けてもすぐにやめるケースが多い。

コンサルの必要性と選び方 ~「いい技術だから成功できる」は短絡的

日本では「いい技術なら向こうから飛びついてくる」、「お金をかけずに儲けられるのでは」と誤解されがちであるが、中国環境ビジネスは「いい技術だから成功できる」のではない。「いい技術+ビジネスマネジメント能力」の両方が必要である。この「ビジネスマネジメント能力」とは、中国環境市場に関する人脈・知識・皮膚感覚・ビジネス戦略構築能力・ビジネスの進め方に対する習熟度・マーケティング能力などを指す。この能力がなければ中国環境ビジネスの成功はおぼつかないが、中国環境コンサルタントと連携することで対応可能となる。例えば、欧米は技術力よりも政治力で、環境分野のグローバルスタンダード構築を進めてきている。

一般の日本の中国ビジネスコンサルタントは、環境・省エネ事業の特殊性(環境ビジネス=規制ビジネス。技術工学的知識必須)や現場の技術的側面を理解していないことが多い。

中国のコンサルタントは、日本人の立場に立ち続けるとは限らない。実際に、使っていた中国コンサル企業から知財権侵害で訴えられた日本企業の例もある。中国の環境・省エネ事情にマクロ・ミクロの面で通じているのか、有力人脈を持っているのかなど、見極めるべき点が多い。「中国人だから」、「中国の有力コンサル企業だから」だけで決めてしまうのはリスキーである。

ふさわしいコンサルタントかどうかの基準は、①現場の環境市場の「皮膚感覚」があるかどうか、②技術メカニズムを理解しているか、③多彩な環境人脈を持っているか、④日本のビジネス習慣と中国のビジネス習慣の両方に精通し、戦略性を持って中国ビジネスを進められるか、⑤環境市場・政策情報に精通しているか――である。

「お偉方」が主導するプロジェクトは、現場の積み重ねや「皮膚感覚」を軽視しがちで、失敗しやすい。実働部隊という“足腰”となる人材がどれだけ充実しているかが重要である。

具体的交渉時の注意点 ~日本のビジネスマナーは通じない

「環境ビジネスはカネになる」と安易に環境産業に参入した業者も多い。日本のカネや技術移転だけを目的にした業者もおり、中国側の意図をしっかり見抜く「センス」が必要である。

引き合い情報では、ダメもとで話を持ちかけてくることも多い。過度な期待は禁物である。

交渉に当たっては、全体から交渉の場を監督する中国環境専門家がいるのが望ましい。

交渉相手とその上級機関に対する事前調査をしっかり行い、弱点を把握して交渉戦略を立てておく。

日本側にとっては、中国環境ビジネスの現場担当者の声や意見を社内の上の方に反映できる体制作りも重要で、全社的な理解とサポートがないと成功しにくい。本社との調整に時間がかかるなど、日本企業の決済は遅いとの指摘は中国でも多い。

中国には「表敬訪問」の習慣がない。

「中日友好」や「熱烈歓迎」、歯の浮くような賛美・慰労の言葉を真に受けない。政治指導者との写真や表彰などもお金で買える。

中国人にとっては酒の席も交渉の場であり、気を緩めない。

「他にも交渉相手はいる」として天びんにかける。

中国側は日本側に気を遣わずに要求できるものは全て要求するが、真に受けない。日本側も同じようにしてよい。疑念がわずかでもあればそのつど遠慮なく聞くこと。中国側は日本側の事情が分からない。基本的なことから説明する必要も出てくる。

交渉決裂を恐れない。帰国直前に折れる場合もある。手ぶらでは帰国できないという日本側の足元を見ている。

交渉時には、日中両言語による覚書を残すべき。口頭ではいい間違い、うろ覚え、あいまいさが残ってしまう。特に価格面での詰めはしっかり行い、言葉の定義や習慣の違いもあるので、専門家が同席するのが望ましい。

日本の行政機関とのつながりをほのめかすことは抑止力になる。中国側は外交問題化を恐れている。

メンツを立てることを忘れずに。

日本招待は大きなカードになりうる場合も。

戦争贖罪意識、満州時代に幼少期を過ごしたなどのセンチメンタルな情緒は中国側の交渉カードになっている。ビジネスはビジネス、社会貢献は社会貢献と割り切る。

代理店方式の注意点

 中国企業に代理店になってもらい、事業展開する場合、代理店業務に期限を設け、実績を見て更新を決めるようにし、総代理の権限を簡単に渡さない。複数の企業に代理店業務を任せ、切磋琢磨させて、その実績や働きを見ながら信頼できる代理店に徐々に大きな権限を任せていくのが望ましい。最初から、長期の総代理の権限を与えてはならない。

中国環境ビジネスに予算必要 ~先行投資がなければ成功しない

中国環境ビジネスの将来性は非常に大きいといえる。しかし外国でのビジネスである以上、様々なリスクがある。特に中国は、交渉能力が高い、市場変化が大きい、国産化戦略にこだわるなど多くの難点がある。このため、相当な覚悟(全社挙げての取り組み)と準備(マーケティング)が必要である。

特に中小企業に多いのが、中国環境ビジネスを軽く考え、お金を掛けずに手っ取り早く儲かるようにしようとして、失敗するケースである。中国環境ビジネスの成功には、上記のような準備と先行投資が必要である。そして担当者を決め、アドバイザーを招聘し、中国環境ビジネス市場を研究し、ビジネス習慣の違いを熟知し、市場調査・情報収集を行い、対中環境ビジネス戦略を構築し、現地で人脈開拓し、実証事業を行って経験を蓄積するなどの準備事業を進めていくことが重要である。また初期には多少の試行錯誤による失敗を認めることも必要である。

行政向けの提言

JETROが中心となって中国環境・省エネビジネスの支援を行っているが、その実情はマッチングや中国側引き合い情報の提供に限られ、さほど成果が挙がっていない。その主な要因は、個別企業へのフォローができないこと、民間コンサルのような支援事業に対する切迫感がないことであろう。

これまで日本の対中環境・省エネビジネスは、個別の製品や技術、コンサルティングサービスを売ることがメインであった。中国の環境・省エネ市場は刻一刻と変化しており、たとえ今売れても、そのうち類似品が出回ったり政策が変更されたりして、売れなくなってしまう可能性がある。これではその場限りのビジネスとなり、長く続けられない。

欧米は、中国で環境・省エネの国家規格を押さえようとしている。規格・基準を押さえれば、その後のビジネスも長く続けられる。例えば建築省エネ、北京のエネルギー消費センサー、POPs測定方法、土壌処理・汚泥処理には欧米の触手が延びている。

日本も、対中環境・省エネビジネスについて、政策支援・規格策定支援・啓蒙活動・留日人材活用・産学連携などと合わせたパッケージ型で行わなければ、戦略的総合的に行わなければ、10年後に欧米の後塵を拝することになろう。現在、経済産業省、環境省、JICA、JBIC、JETRO、NEDOなどが対中環境協力を進めているが、バラバラの状態である。また今後の対中環境・省エネビジネス支援戦略については、民間の対中環境・省エネビジネスコンサルティング企業などのノウハウや人材の活用が重要になる。中央の組織によるオールジャパン体制が難しければ、自治体等によるオールオーサカ、オールカンサイ体制等で取り組むべきである。

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中国環境ビジネスマニュアル2014年5月版
環境企業のため 中国市場の攻略ポイント

メールにて無料配信しています。
ご入用の方は当方(web@jcesc.com)までご連絡下さい。
(競合他社の方等にはお断りすることがあります)

目次第一部 日中環境ビジネスをめぐる近況
1-1.中国環境ビジネスは本格拡大
拡大する環境投資と環境インフラ整備状況
中国の環境分野12次五ヵ年計画
環境分野の新たな五ヵ年計画(行動計画)
個別事例:大気汚染防止五ヵ年計画の構成
一部環境「12五」目標
1-2.日中環境交流・協力は回復期
第二部 有望な中国環境ビジネス分野
2-1.ビジネスチャンスある分野の見分け方
2-2.有望な分野第三部 対中環境ビジネスが困難な原因
3-0.中国環境ビジネスが困難な原因
3-1.環境事業の分野やビジネスモデルの多様性
3-2.環境ビジネスは規制ビジネス
3-3.日本企業の勉強不足第四部 中国環境ビジネスの具体的攻略法
4-0.中国環境ビジネス攻略法 概略
大きく2種ある販路開拓方法
4-1.基礎事項
4-1-1.先入観を排して中国を徹底研究し、日本ビジネスの感覚を脱すべし
4-1-2.中国で重要な人脈「関係」も注意点多し
4-1-3.市場・技術・産業動向を把握
4-1-4.環境分野の行政組織、研究機関、業界団体
環境法令策定過程
研究機関との連携は重要も背景を調べるべし
主な環境科学研究機関
環境分野の業界団体 一部例
4-1-5.コンサルの必要性・選び方
理系出身者が勘違いしがちな「いい技術さえあればうまくいく」
中国のコンサルタントはリスク多し
4-1-6.中国ビジネス上のリスク
4-1-7.中国環境ビジネスに予算必要
4-2.市場調査/FS (略)
4-3.戦略作成:ビジネスモデルの構築
4-3-1.協力相手は慎重に選ぶ
4-3-2.展開する地域と分野
4-4.戦略実行
4-4-1.提携先候補リストアップと提携先選定
候補先企業への信用調査
4-4-2.中国市場に合わせたカスタマイズ
4-4-3.重要な最初の実績
4-4-4.日系団体との連携
4-4-5.盲点となる通訳の重要性
4-4-6.技術コピー、知財対策
4-4-7.代理店方式の注意点
4-5.広報宣伝と開拓
4-5-1.情報収集と情報発信
4-5-2.展示会やマッチングセミナー
中国の見本市の現況
環境展の特徴とその選定方法
JCESC推奨の環境展リスト
出展支援プログラム
事前の簡易市場調査と戦略作り
4-5-3.具体的交渉時の注意点第五部 当社業務紹介